成年後見の研修会
みなさん、おはようございます。
司法書士@五反田の荒谷健一郎による連続投稿です
先日、成年後見に関する後見人業務の研修(東京家裁判事による研修会)に参加してきましたので、メモ代わりに投稿します。
【後見事務】
・遺産分割について
被後見人の法定相続分は、原則、確保すること。確保できないときは、確保できない合理的理由を家裁に説明すること。後見人として、分割協議をコントロールすることも求められる。また、被後見人が遺留分減殺請求権者のときは、原則、後見人が代わって減殺請求することを忘れないこと。
・不動産の処分について
売却の必要性と売却価格の適正をはかる必要があります。また、基本的に裁判所は、後見人が下した判断をできるだけ尊重するので、後見人は慎重に判断が必要。また、監督業務としては、後見人をコントロールする必要があるので、不正が起きないように、売却した後は速やかに売買代金の所在とその金額が確かに存在することを確認することが必要(当然ですが)。親族後見人が監督を無視する場合は、その後見人を解任し、監督人を後見人に変える対応も裁判所としては行うとのこと。
・辞任について
後見人が親族との信頼関係を構築できないときは、辞任もやむを得ないが、早急すぎる辞任は避けるべきとのこと。また、辞任したいときは、後任の方を推薦してもらいたいとのこと。
・親族からの後見人に対するクレームについて
クレームがありそうなときは、予め裁判所に報告をあげてもらえるとありがたいとのこと。(報告については、細かい報告は不要ですが、必要な時に必要な範囲での報告は必須とのこと)
・本人財産からの支出
施設費は当然OK。本人の生活費もOK(本人のものかきちんと確認する必要はあるが)。親族の生活費については、慎重に判断を(扶養義務がある親族に対して適正な金額の支出は可能だが、成人した子供に対する支出には慎重に検討する必要がある)親族による介護に対して介護料を支払う場合、高度な介護であれば可能(プロにやってもらうと同レベルの介護の場合)
【被後見人の利益保持の観点からの問題として】
・親族への贈与は、基本的に不可
・親族への貸付
生活費なら事案によっては可(上記の親族の生活費の支出に問題があるが、支出が必要なケースを貸付という形に変える手法)、事業資金は基本的に不可(貸し倒れリスクがあるので、十分な担保をとれるなら検討可能)【生前からの意思は、全く無視はしないが、それのみをもって認めることもない。生前は生前、現状は現状とのこと。現状を踏まえて慎重に判断を】
不動産の有効利用(リフォーム・買い替え・再建築)
在宅ならまだしも施設入所の場合だと難しい。(有効利用にかこつけて、親族の利益が優先されていないかを検討する必要はある。つまり、リフォームに合わせて、親族の利用できる部屋面積が増大しているケースなど。)
・報酬付与の申立
報酬額を増加させる目的で、詳細な事務メモを大量に送りつけるのはやめてもらいたい。量より質で報告して下さいとのこと。
・死後事務
葬儀費用等を被後見人財産から支出しても、裁判所としては問題視することはない(問題視しないと言っているだけで、当然やっていいという話ではないが)。なお、支出する場合でもそれ相応の費用とすること。墓地・墓石の購入等でも少額ならば問題視しないが、高額はいかがなものか(そもそも、その辺ことは後見人が関与するべき事柄ではない。)
なお、後見制度支援信託については、特に取り上げられませんでした。
後見業務に携わる方の業務上のヒントになればと思います。