不動産の売買契約に違反した場合の解除
みなさん、こんばんは。
司法書士@五反田の荒谷健一郎です。
先日、「不動産法務・登記相談所」で、契約違反による解除に関する記事を書いたら、偶然ですが、同じようなご相談があったので、少しびっくりしました。
なので、こちらでもご紹介しておきます。
不動産の売買契約を解除する方法として、「手付による解除」とよく混同されるものとして、「契約違反による解除」というものがあります。
手付解除は、解除理由が問われることはなく、買主ならば、手付金を放棄すれば解除でき、売主ならば、手付金の倍額を買主に支払えば解除できるものです。(ただし、相手方が履行着手している場合だと手付解除できません。)
それとよく間違えて、自ら契約違反をしても、違約金を支払えば解除できると思っている人が多いようですが、これは実は誤りです。
自ら契約違反をしておきながら、違約金を支払えば解除することは困難かと考えられます。一般的には、「契約違反による解除」は、「債務の履行を提供する者」が、「債務の履行を行わない者」に対して、債務の履行を促し、それでも債務の履行に応じない場合に、契約の解除をすることができるとされているからです。(つまり、違反していない者が解除を主張でき、違反者が自己の都合で契約違反による解除は主張できないと考えられています。)
もし仮に違反をした者が、手付解除期限経過後に、契約を解除したい場合は、相手方の了承を得て合意解除するのが一般的かと考えられますが、この場合、一定の対価を渡さないと解除に応じてもらうのは困難でしょう。
次に、「契約違反による解除」になった場合に備えて、一般的に契約書に定めておくものが、「損害賠償額の予定」の条項とその金額です。
契約違反によって契約解除になった場合、違反された者(解除権を行使した者)は、違反者である相手方に損害賠償(違約金)を請求することができますが、この金額を、事後(解除することになった後)に改めて計算するのはなかなか難しく(違約金の算定に争いが生じる可能性が高いためです。)、その算定すること自体が争いの元となるため、あらかじめ「損害賠償額の予定」としての金額を契約書に明記しておくのが、一般的なところです。
「損害賠償額の予定」の金額として、多くは売買代金の10〜20%の金額と定めるようですが、手付金と同じ金額とするケースもあるようです。(宅地建物取引業者が売主となる場合は、損害賠償額の予定金額と違約金額の合計が、売買代金の2割を超える旨の定めはできないことになっています。)
なお、「損害賠償額の予定」を予め取り決めていた場合には、仮に実際の損害額がその金額より多くても少なくても、違反者はその予定額を支払うことになり、両者とも事後にその増額や減額を請求することは原則的にはできなくなります。
ちなみに、「手付金」に関する前回の記事はこちら↓
https://www.ace-godo.com/modules/blog_a/details.php?bid=144
(参考文献 「プロが教える!不動産契約書式の事例集」 住宅新報社 )