建物を増築した場合、増築費用を支出した人は新たに登記名義人になれる?
みなさん、こんばんは。
五反田駅前で開業している司法書士の荒谷健一郎です。
今日も暑かったですね。皆さんは、お月見しましたか?
さて、増築の話題ですが、最近受けたご質問で、「父親名義の建物について、息子さんが全額出費して増改築した場合、建物の名義はどうしたらいいのでしょうか。」ということがありました。
この場合の結論としましては、父と息子の共有名義にすることになります。ただ、共有名義とするとしても、法律上いろいろと問題があります。
まず民法の規定上からいくと、増改築費用を息子さんが支出して、増改築がなされても、息子さんは当然に増改築部分の所有権(共有持分権)を取得することにはなりません。(附合・混合・加工)
反対に、税務上の観点から、民法の原則に基づいて、息子さんに増改築相当分の建物の共有持分権を与えない場合、息子さんが、父親に、増改築費用相当額を贈与したこととみなされ、贈与税が課税されることになります。
よって、この場合の手続としては、建物表題登記の変更登記をしたうえで、「増改築により増加した建物評価/増改築後の建物全体評価」の割合の共有持分を息子さんに移転させる「所有権一部移転登記」をすることになります。
ちなみに、移転原因は、「代物弁済」とするのが一般的です。民法の原則からすると所有権を取得する原因はないのですが、息子さんが父親に増改築費用相当額を贈与したのではなく、お金を貸したという理論構成をし、その弁済の代わりとして、増改築費用相当額の共有持分を取得したことにするのです。
なお、このあたりの詳細な部分は、かなり専門的な内容になるため、実際にこのような場面に遭遇したときは、贈与税を発生させないようにするために、専門家(司法書士、土地家屋調査士、税理士)を交えて手続することをお勧めいたします。